This Night 今宵はフォーエバー授業に歌を This Night 今宵はフォーエバー ♪ビリー・ジョエル(Billy Joel)●内容で展開その1:原曲を聴かせる This Night(今宵はフォーエバー)は、ビリー・ジョエルの1983年のアルバムAn Innocent Man所収の1曲。野太い男性の声でドゥーワップ (doo-wop)調の編曲がなされているが、そのモチーフはベートーベンが1798年に作曲したピアノソナタ「悲愴」(Sonata Pathétique)の第2楽章。ベートーベンの曲は「エリーゼのために」が1959年ザ・ピーナッツ「情熱の花」、1981年ザ・ヴィーナス の「キッスは目にして」に編曲されているのも有名なのでその話も必ずしているのだが、あるとき生徒から「テレーゼ(Therese)のために」という曲名が本当だったとか、ビリー・ジョエルがアルコール中毒だと教えてもらったこともある。このように生徒の方が物知りで驚かされることもしばしばである。 ●内容で展開その2:巧みな場面設定 テレビドラマの初回の難しさは人物設定をどのように提示するかにある。ある程度、早い段階で場面設定や主人公の職業・年齢・家族構成などを視聴者に知ってもらわなければならない。そこが脚本家の腕の見せ所だ。 物語構成の歌の場合も同じであり、この歌は冒頭の6行で見事に場面設定が出来ている。 言わなかったかな、恋の準備はできていないって。2人で約束しなかったっけ、単なる友達だって。 それで、ダンスした スロー・ダンスだったけど… 僕は約束を破り始めていた まさに、その時そこで 「主人公は男性」(男性シンガーのビリー・ジョエルが歌っているから)、「この男女2人は以前から恋仲になるかならないか、いわゆる『友達以上恋人未満』の関係」「年齢は10代や20代ではなく30代以上と思われる」(素早い動きのダンスではなく、スロー・ダンスを踊っているから)、「男性は彼女に恋をし始めてしまった」(切ない方向へと追い詰めていく手腕が見事!)ということが6行に凝縮している! 私はビリー・ジョエルの筆力にただただ脱帽してしまう。しかしながら、実際に授業で扱ってみると、生徒たちにはその素晴らしさが分からないようであり、誠に遺憾である。そこで理解を深めるための「発問」が大切になる。 教師:「スロー・ダンスを踊った」という歌詞がありますが、この2人の年齢はどのくらいだと思いますか? みなさんと同じ10代後半から20代前半の若い人達、それとも30代以上の少し年齢の高い人達のどちらだと思いますか。 生徒:…、わかりません。 というやりとりを毎回し続けている。くじけずに これからも発問していく所存である。 以下、全訳をお読みいただき、大人の皆様には, 場面設定の絶妙さを味わっていただけたらと願う。 言わなかったかな、恋の準備はできていないって。2人で約束しなかったっけ、単なる友達だって。 それで、ダンスした スロー・ダンスだったけど… 僕は約束を破り始めていた まさに、その時そこで 誓わなかったかな、面倒はナシだって。 欲しがってなかったっけ、訳知りの誰かを。 こうして君がここにいるのだから 同じ状況ではない 突然、ルールを思い出せなくなる * この夜は僕のもの 君と僕だけ 明日ははるか先 今夜なら永遠に続く ずっとそばにいた 僕みたいなのはもっと分別をもたなくちゃ 恋に落ちるなんて 最低だって。 言わなかった? 彼女を忘れるのに時間がいると。 君は逃げているんじゃなかったっけ、 気のない誰かから。 いくつの夜 君なしで寂しくいたのだろう。 自分に言い聞かせて あんまり気にしていないと。 いくつの夜 君のことを思っていたのだろう… 君を抱きしめたくて… でも、君はいないと知りながら… この夜、君は僕のもの 君と僕だけ 昨日[過去のこと]は、忘れなよ 今夜、僕らは一緒 ●文法で展開:現在完了進行形 How many nights have I been thinking about you? 「いくつの夜 君のことを思っていたのだろう」という歌詞に現在完了進行形が含まれているため、文法事項は現在完了形と現在完了進行形の継続の用法の使い分けを取り上げるようにしている。現在完了形は状態動詞(be, know, loveなど)を用いて「状態の継続」で用いること、現在完了進行形は動作動詞を用いて「動作の継続」で用いることを対比説明する。 (a) 状態動詞:状態→状態の継続 【現在形】「(ふだん)~している」から 【現在完了形】「(今までずっと)~している」へ I know him. 知っている I have known him since he was small. (今まで)知っている 小さいときから (b)動作動詞:その場の動作→動作の継続 【現在進行形】「(今その場で)~している」から 【現在完了進行形】「(今まで)~している」へ It is raining now. いる 雨が降って… It has been raining since last night. (今まで)いる 雨が降って… 昨夜から 以下の口頭練習を授業に取り入れたい。 いる I(アイ) am(アム) you(ユー) are(ア~) it(イッt) is(イズ) いた I(アイ) was(ワズ) you(ユー) were(ワァ~) it(イッ) was(ワズ) いる I(アイ)’m(ム) you(ユー)’re(ァ) it(イッ)’s(ツ) (ずっと)いる I(アイ)’ve(ヴ) been(ビン) you(ユー)’ve(ヴ) been(ビン) it(イッ)’s(ツ) been(ビン) 大学入試問題で取り上げられる場合は、現在完了形の状態の継続の用法では、状態動詞として安定しているknow(知っている)を用いたhave known([今までずっと]知っている)が多い。 ・1976年から知っている センター90 答えは② John and Mary ( ) each other since 1976. ① have been knowing] ② have known ③ were knowing ④ were known 現在完了進行形の動作の継続の用法は、「待っている」「期待している」「働いている」(be waiting, be expecting, be working)など進行形に出来る動作動詞を用いる。 ・最近(ずっと)働いている センター追03 Saki, why don’t you take some time off? You ( ) too hard lately. 答えは④ ① would work ② had worked ③ should have worked ④ have been working ・この2時間(ずっと)期待している センター追01 I wonder if Stella has lost my number. ( ) her call for the last two hours. 答えは④ ① I’d expected ② I’ll have expected ③ I’m expecting ④ I’ve been expecting 中学校で現在完了形の継続用法を扱うときには状態動詞(know, love, beなど)という限定があり、動作動詞のstudyなどは継続の意味では使えないことを教員が意識する必要がある(have studiedだと完了「(すでに)勉強している」の意味になる)。「3年間英語を勉強している」は現在完了進行形を使うのが望ましく、I’ve been studying English for three years.になるので高校では大いに扱ってほしい。 |